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「漢の風 みずほの国の雨」 その3

コラム

2018年9月10日
「漢の風 みずほの国の雨」 その3

対する劉邦の漢の本拠は、黄河流域の「中原」と呼ばれる地域です。米ではなく、麦などを作る地域ですね。乾いた土地であり、また冬季はかなり寒いなど、自然条件は厳しいと言えるでしょう。ご存知の通り文明が古くから進んだ当時の先進地域であり、また北方異民族の侵略に曝され続けた歴史もあります。このような地理的、歴史的な事情から合理主義を追求せざるを得ない土地であり、情に流される者は子供扱いされていたのではないでしょうか。

 

このように、項羽と劉邦の根拠地の性格は、多くの面で対照的でした。ちなみに、この小説の「小説新潮」連載時の題は、「漢の風 楚の雨」でした。司馬先生は、この小説のあとがきの最後を、「当初、漢の風と楚の雨を想うことなしに、この長い作品をかきつづけることができなかった。原題にみずから恩を感じて、蛇足ながら以上を書き添える。」と結んでいます。

 

このような気持ちで司馬先生が記した物語を、私は「漢の風とみずほの国、すなわち日本の雨」を想いつつ読み続けていました。

 

(続く)