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~大阪の交通事故弁護士~ 10年前の投稿から、中間利息控除、インフレーション

コラム

2025年2月11日
~大阪の交通事故弁護士~ 10年前の投稿から、中間利息控除、インフレーション

2025.2.11

 

今日も大阪市天王寺区(大阪上本町・谷町九丁目)の事務所で、交通事故被害者からの受任事務を処理しています。

 

今回は、10年前の勤務弁護士時代に書いたアメブロ記事を2つ、紹介します。

 

最近のインフレを受けてようやく、「時が来た。」と言うべき頃合いでしょうか?というか、私が想定しているこれからの日本においては、特に、死亡や重度後遺障害を招いた交通事故の被害者のうち、金融リテラシーのない人たちには過酷な未来が待ち受けていることでしょう。弁護士として依頼者と関係を持つに過ぎない私が、それでも大切に思う依頼者に対して、インフレ対策としてどこまでの助言を行うべきか、迷うところです。

 

https://ameblo.jp/sukeroku-8/entry-11992491272.html?frm=theme

 

以下、引用です。

「なお、ここまで読まれて、なぜ中間利息が控除されるのに、物価上昇率については考慮されていないのか、という問題意識を持たれた方もいらっしゃるかと思います。特に、金融や経済に強い方であれば、このような疑問を持たれるのがむしろ自然でしょう。鋭い問題意識であると思いますが、現在の実務はまだその問題に対して答えることができていません。現在の実務が前提としている社会は、以下のような実に滑稽なものなのです。

「現在価格100万円の介護ベッドの30年後の価格が100万円のままであるにもかかわらず、現金23万1377円を同じ30年間貯蓄等で運用すれば100万円に増える社会」」

 

https://ameblo.jp/sukeroku-8/entry-11995943341.html?frm=theme

 

以下、引用です。

「仮に45年前にこのような社会を前提とした損害額計算による賠償を受けた被害者の方がいたとすれば、その直後に起こる所謂「狂乱物価」によって、受け取った賠償金の実質的な価値は暴落したことは明らかです。

緑本の41頁には、消極損害の逸失利益に関する説明の中で、「将来の一般的な賃金や物価の上昇(下降)は考慮しない。」という記載があり、更に逸失利益額の算定にあたり、「その後の物価上昇ないし賃金上昇を斟酌しなかったとしても、・・・不合理なものとはいえ」ないという判断をした最高裁昭和58年2月18日判決が紹介されています。あくまでも逸失利益額算定に関する判断の中において、物価上昇を考慮するか否かに関するはなしであり、これまで述べてきた問題とは一応別の問題であるものの、かなり類似する問題点に関する判断であると言えます。また、逸失利益額算定にあたり賃金上昇を考慮すべきかという点は、これまで述べてきた問題点とその背景が共通するはなしであると思われます。

このような物価上昇や賃金上昇を黙殺する(にもかかわらず中間利息は控除する)実務の損害額認定によって、これまでに賠償金を受け取った被害者の方の損害が、本当にてん補されてきたのか、大いに疑問です。被害者の方が判決後どのような人生を歩まれ、いかなる経済的困難に苦しまれたのかに関する追跡調査の必要性は高いと言えるでしょう。更に言えば、その経済的困難を裁判所は予見できなかったのか、予見できたとしてなぜそれを回避する意思を持たず、漫然と先例踏襲の罠に嵌ってしまったのかに関する研究も必要ではないのでしょうか。

手垢のついた表現ではありますが、これまで交通事故被害者は二度傷つけられてきたのではないでしょうか。一度目は加害者によって、二度目は裁判所によって。」

 

あくまでも個人的な見解ですが、法律家一般が金融に詳しいようには見えません。にもかかわらず、なぜか中間利息の控除は認められ、インフレーションは無視されているのですから、金融のプロである保険会社に手玉に取られているような気がしないでもありません。人がものごとを観察、分析及び意思決定するには、あるいは考え方の異なる他者と理解し合うためには、数学というツールは不可欠なものなのですが、この観点が法曹養成システムにおいては、すっぽりと抜け落ちているように感じています。