(3)治療関係費について
ア 治療関係費には、治療費、入院費等のほか、診断書作成費等の文書料があります。これらについては、原則として、必要かつ相当なものであり、要した実費全額が損害として認められます。
イ 症状固定後の治療費
・原則:認められません。
・例外:症状の内容・程度に照らし、必要かつ相当なものは認められます。そもそも症状固定というのは、これ以上の治療は無意味であるという状態を意味しますので、例外の要件である必要性・相当性の証明は厳しいものになるでしょう(ちなみに、この症状固定後の治療費を、1年以上にわたり認めた裁判例があるのですが、その裁判例を他の弁護士と分析していた際、他の弁護士が信じられない、おかしいと言い続けていました。ですから、仮に法律相談で弁護士が認められるわけがないと回答したとしても、それだけで諦めるのは危険だと言えるのかもしれません。)。
ウ 入院中の特別室使用料
・原則:認められません。
・例外:①医師の指示があった場合、②症状が重篤であった場合、③空室がなかった場合等の特別の事情がある場合に限り、相当な期間について認められます。
エ 整骨院・接骨院における施術費、鍼灸、マッサージ費用、温泉治療費等
①医師の指示があった場合又は②症状により有効かつ相当な場合
→相当額を認めることがあります。
いかがでしょうか。要するに、治療に必要と言えるか、仮に必要だとしても、そこまでやらなければならないか(法律家はこのような状態のことを、「不相当」「相当でない」と言い習わしています。単に不要だと言えばいいのではないか、と思われる方も多いでしょうが、まあ、こういう言い方をするのが業界のしきたりであるとでも思って頂ければよろしいかと思います。深く考えるのはやめておきましょう。)、という必要性・相当性がポイントになっています。
様々な費用の中には、この2つが認められやすいものと認められにくいものがあること、そしてこの裁判所の態度の違いは、普通の社会人の常識的な考え方と結構似ていることがわかっていただけたでしょうか。