実は先月、大阪弁護士会の判例分析部会で議論したときは、1の場合でも葬儀代領収証を出すという弁護士が多数を占めるという「空気」でした(出さないと明確に言ったのは、私一人でしたので・・・。)。ただし、途中までは「特段の立証を要しない」という記載の存在すら知らない人が相当割合でいたようですので、問題意識が共有されていなかった可能性があります。
2の場合を想定すると、ほとんどの弁護士が出すのだと思います。しかし、2の場合は原告が「葬儀代領収証を」出すという話ではあり得ないということに注意が必要です。葬儀関係費の核である葬儀代が150万円よりも大幅に低いという事実が乙号証(民事訴訟では被告が提出した証拠という意味です。)で立証された場合に、葬儀代以外にもこんなに支出したという立証を原告が行うという話ですので、甲号証(民事訴訟では原告が提出した証拠という意味です。)には葬儀代以外の支出の領収証があるということになります。
このようなことを考えている私ですから、「葬儀代領収証を、争われれば出さないといけない。」という見解を同業者から聞かされる度に、胸がざわつきます。私も、原告が葬儀代領収証を出さないといけなくなる場面を全く想定できないわけではないのですが、それは非常に限られていると想定しています。私なら、相手方の情報量、相手方や裁判所が葬儀代の金額にどの程度拘っているのかや訴訟の流れ等を見極めながら、慎重に検討するでしょう。
このような次第で、原告が甲号証として葬儀代領収証を出しており、判決で150万円を大きく下回る葬儀関係費の認定を受けたという事案については、実際にどのような事情・経緯があったのか、興味があります。ですから私は、このような事案の報告を受けた際、「乙号証で認定されたのでしょうか?」と尋ね続けるつもりです。