2026.10.21
今日も大阪市天王寺区(大阪上本町・谷町九丁目)の事務所で、交通事故被害者からの受任事務を処理しています。
近年の物価上昇を受けて、交通事故損害賠償の世界においても、各種の慰謝料を増額すべきであるという動きが高まっています。私も、同じ意見なのですが、更に踏み込んで、慰謝料基準自体を関数化すべきであると考えています。例えば、消費者物価指数(CPI)の変動に従い、慰謝料額も同じ割合で変動するよう、数式化した慰謝料基準に変えてしまうということです。
管理通貨制度や為替の変動相場制を前提とすると、慰謝料基準が法定通貨の名目額で表現されているという現実に、私は恐怖感すら感じています。特に、日本円で慰謝料を定めることは、本当に恐ろしいことです。日本国民は、ついさっきまでインフレを目指す政権を支持していたかと思えば、ようやく大願成就でインフレとなった途端、「君らは提灯行列でもやるのかね」と思っていたところ、やはり物価高に怒り狂うという、私には理解しがたいところがありますが、そんな国民が何と言おうと、司法の世界においては、慰謝料が実質的に目減りするのと同じ結果になることを防ぐべく、機動的に動き続けなければなりません。
もちろん、この慰謝料基準の関数化により、慰謝料の改定が全く不要となるわけではありません。通貨価値変動問題とは別個独立の問題もあるからです。例えば、そもそも同じような先進国と比較すると、我が国の慰謝料は一般的に低すぎないか等の問題です。これらについては、常に議論されるべきです。ただ、これらの問題は、通貨価値変動の問題とは独立した問題ですから、通貨価値変動の問題については、消費者物価指数に連動させる関数化基準の採用という処方箋を書きつつ、更にそもそも我が国の慰謝料が低すぎたのではないかという問題につき、比較法的な観点から処方箋を書いてみるなど、前者と独立したアプローチをとることは可能なのです。
人間の思考や議論というのも、有限の資源です。したがって、関数化、自動化に馴染むところはそれで行けばよい、そうでないところ、人間が頭を使うべきところ、コンセンサス形成に困難がありそうなところに、資源を集中配分する戦略的な思考というものは、やはり必要ではないかと思料しております。